院生にインタビューを行いました!

 吉川さんと谷久保さんは、2023年度に創造表現学部 創作表現専攻を卒業した後、2024年度に文化創造研究科 文化創造専攻 創作表現専修(大学院)へ進学されました。専修での2年間を経てこの春、卒業されます。創作表現専攻から大学院へと進学された先輩として、お二人にお話をお聞きしました。

―大学院へ行こうと思ったのはいつからですか?

吉川 大学2年生の終わりから3年生の始まりくらいにかけて、このまま卒業するにはまだ勉強したりないなという気持ちがあって、大学院へ行こうと思いました。今の私はまだ社会に出せないなと思って。

谷久保 分かります。大学入学時はコロナ禍だったので、2年間はオンラインでほとんど通ってないし大学で学んだ感が薄かった。せっかく大学に入ったのにこのまま卒業するのは疑問に感じて、大学院へ行って引き続き学ぼうと思いました。もし、コロナ禍がなければ大学院へ行ってなかったかもしれない。

―大学院での2年間について教えてください。

吉川 大学院での2年間は今まで生きてきた中で一番楽しい2年間を過ごすことができたと思っています。大学での4年間もそれまでの人生の中で一番楽しい4年間だと思っていたのですが、大学院はさらに楽しかったです。

谷久保 右に同意です。がむしゃらに研究したのが楽しかったです。私たちは先輩がいなかったので、右も左も分からないまま入って、自分の研究領域に近しいだろう文献や論文を探して読んで、を繰り返していて、そういう時間が楽しかったです。大学院の醍醐味だと思います。

吉川 好きなことをもっと学術的かつ理論的に勉強していくという過程が、これまでやったことがない勉強の仕方だったので新鮮でした。自分が好きなものに理由を見つけ、それを別のことにどうやって繋げられるかを考える作業がとても楽しかったです。先生方や大学院の仲間と一緒に自分の研究テーマをより深掘りしていく作業は、1人で小説を書いているだけでは絶対に得られなかった経験だし、密度が濃い楽しい時間となりました。

―傍から見てとても忙しそうに見えました。

谷久保 1年次はとくに院生が二人だけだったので頻繁に発表が回ってきて、その準備で忙しかったです。そのおかげで実力はつきました。大学での学びで足りなかった分を大学院で補って余りあるほど学べて良かったです。

吉川 ビシバシ鍛えてもらいました。発表レジュメの作り方もだいぶ洗練されたと思います。2年間でとても成長しました。私も大学院まで行ってちゃんと勉強しきれた、充分やり切ったと感じています。

―仲間と支え合ってこられたことも大きかったですか?

吉川 そうですね。1人で書くだけでは見つけられない、人と話をして意見をもらったりして、初めてたどり着けるところまでいけたのかなと思います。

谷久保 お互いにテーマが違うとそれだけで見えてくるものが違う。自分とは違う視点を持っている人の意見を参考にすることができて良かったです。

吉川 自分の研究テーマを持っているのは強いです。この分野は自分の守備範囲だとか、相手の研究テーマと重なる部分があればクロスしてそれぞれの作品に影響を与え合ったりできる。それぞれの研究テーマがあって、話し合いが生まれて、それが自分の作品に繋がっていく、というところが面白いと思います。

―大学での4年間と大学院での2年間の違いを教えてください。

吉川 先生との関わり方、密度の違いが一番大きいと思います。最初は谷久保さんと私の院生が二人だけの授業だったので、先生と話す時間も長く、先生がどう考えていらっしゃるのかより深く理解できたし、作品や発表するレジュメに対して親身にアドバイスしてくださって、先生との関わりが高まったのが大学との違いです。

谷久保 先生との関係性が大学でのゼミよりも内側です。授業の議題や先生の話が自分たちの研究テーマに沿ったものになっていて、オーダーメイドに近い授業をしてくれました。あと、自分の意志で大学院に来ている人たちだから、ちゃんと勉強しようと意欲の高い人たちが集まっているので、そういう周りから刺激を受けて自分も頑張ろうと思えます。

―オーダーメイドに近い授業とは?

吉川 先生方それぞれにご専門のジャンルがあって、その中で自分の研究テーマに適応する題材のものを選んでくださいました。自分からこれをやりたいですと提案することもありました。先生毎に専門のジャンルがあるからこそ、自分の研究テーマが別のジャンルと接続できるようになっていけたので良かったです。

―研究テーマの見つけ方、またどういう経緯でそのテーマにしたのかを教えてください。

谷久保 自分の好きなものを突き詰めるしかないですね。

(吉川さんの研究テーマは『ぬいぐるみ』)

吉川 自分が小説を書く中でなぜか書いてしまうテーマがいくつかありました。そのいくつかのテーマを全部包括できるモチーフとして人形が思いつき、人形が出てきたら私が書きたいことが全部書けるかもしれないと気づいたのが大学3年生の後半でした。その後、人形よりもぬいぐるみの方により自分の好きな関心が強く、ぬいぐるみについて深掘りしたいと思うようになりました。ちょうどこれから世間の関心がぬいぐるみに向きつつある時期だったので、ぬいぐるみについてより深掘りして論理的に説明できるようになったらいいなと考えました。また、自分が好きなものが好きな理由を自分で説明できるようになったり、ぬいぐるみが出てくる小説を書ける喜びに気がついたというのもあります。 研究テーマの見つけ方は、自分が書きたいものと好きなものが合致したらそこにはまるところがあると思います。

(谷久保さんの研究テーマは『女性同士の同性愛について』)

谷久保 自分は女性同士の関係性について10年くらいずっとライトノベル小説として書いてきました。女性同士の関係性が男性同士の関係性に比べて消費されている、雑に扱われているなと感じていて、当たり前にずっと自分が書いてきたものを解体してみようと思いました。実際に研究していくと百合のジャンルは男性が消費するものになっているけど、最初は女性がカウンターカルチャーとして作ろうとしてきたものが途中で男性に奪われたということが分かって。ここからさらに自分がやりたいのは、女性が女性のために作ったものを女性のためにしていきたいなと思っているので、研究していく中で新たな目的を導き出すことができました。創作はフワフワしたままやるものではないと思っています。大学まで来て創作するなら1本自分の芯を持つことは大事だと思います。

―高校まで書いていたものと大学入ってから今までで書く内容に変化はありましたか?

吉川 全く変わりました。高校生の頃に出版した本がありますが、なんとなくその時自分が思いついたことを書いていただけで、あらゆる物事に対する考えの浅さがそのまま出ていて、今考えるとお恥ずかしい限りです。それに対して今は、ちゃんと調べて根拠を見つけて書くとか、これまでに出版された小説だとどういうふうに書かれてきたのか、まだ書かれていないことを書こうとか、自分が今小説を書く意味を考えた上で書けるようになったところが一番変わったと思います。

谷久保 自分は書く内容は変わっていません。ライトノベルは変わらないものが良いとされるところがあるので。でも、その変わらない中でも、大学院に入って研究してきて、小説の中に普遍的なテーマを忍ばせたりとか、カウンター的なものを入れたりすることができるようになったと思います。

吉川 大学院でぬいぐるみの研究をしてきましたが、ぬいぐるみにこだわるつもりはなく、ぬいぐるみを通して人間とは何かみたいな本質的なことを考えてきたので、これからの創作はいろんなモチーフを使って、人間とは何かを考え続けられたらいいなと思います。

―大学院で創作することについてどう思いますか?

谷久保 私たちは大学院に入る前からテーマが決まっていたので、これがあるから大学院に入ろうという意思があったし、それを書き続けてきたから大学院でも書こうと思えた。でも、それがない人もいて、ジェンダーが流行っているからジェンダーについて書いてみるかとか、今ある社会の問題をなんとなく取り入れてみようではダメだと思います。ちゃんと調べて研究してほしい。漠然と創作している人にも好きなものは必ずあるはずなので、自分がなんでそれを好きなのか言語化して、さらに分解し細分化して、最後に残ったものを抽出してみると面白いものがあると思います。

吉川 既に問題になっていることに注目せずに、自分が好きなものを深掘りしていって、実はここに問題があったと提示するくらいがいいのかなと。

谷久保 書くだけではなく、語るとかしゃべるのも大事です。好きなものを言語化できると強いです。

吉川 大学院は発表が多く、しゃべる機会が多い。どうしてそれが大事なのかを自分で明確にして創作するといい作品が書けると思います。

―お二人は就職が決まっていますが、就職後も創作活動を続けますか?

谷久保 働きながら書きます!書いて賞に出したり、大学院で学んだことを活かして、活かして活かして、活かしてまいります!研究するまではいかなくても、自分でやりたいことを調べたり学んだりを、これからもやっていこうかなと思います。

吉川 私も働きながらバランスよく書いていきたいと思います。社会に出てから見えてくるものもあると思うので、社会を見て自分の小説に落とし込めたらいいなと思います。

―お二人は松田先生主催の現代文学読書会によく参加してくれていました。どういう思いで参加されていたのですか?

谷久保 後輩の子たちの話を聞くために参加していました。2つ年が違うだけでだいぶ違う—最大で6才違う—ので、今の子たちの意見を聞くのが新鮮で楽しいです。いろんな後輩に会って新鮮なオタクをすって、社会を知るのも勉強だと思います。

吉川 大学院の中だけで固まるのもよくないかなと。いろんな年代やゼミを越えて同じ作品について違う意見を言い合える環境はすごくいいなと思います。対人も勉強です。

―吉川さんは昨年、学生企画イベントで大前粟生さんと対談をされていますが、イベントをしてどうでしたか?

吉川 イベントをした経験としては、自分で企画を立てて大前さんにコンタクトをとり、ポスターやプレゼン資料を作ったり、いろんな人たちに助けていただいたり、という一連の流れを経験できたのが自分の中で大きな成長に繋がりました。イベントを無事にやりきれたというのが、自分の中でステップアップができたと感じています。有名な作家さんとかいろんな人を呼べる学生企画は創作表現専攻で得られる貴重な社会経験だと思うので、ぜひ使って実行してほしいと思います。

―「創作表現専攻」のいいところはどういうところだと思いますか?

谷久保 同じ志を持った仲間と出会える。小説、漫画、演劇など他のジャンルに興味を持っている人たちと出会って繋がりができるのは面白いと思います。映画、演劇、漫画などいろんな授業が受けられて全方向から知識を吸収できるのがいいですね。

吉川 私は小説創作がしたいと思って入ったのですが、やりたいことが小説メインだったとしても小説以外の授業を取り、他のジャンルからいろんな要素を取り入れて、自分の創作をより強くレベルアップさせることができたと思います。創作表現専攻でいろんな授業が取れるプラス、国文学の授業、心理学の授業など、学部を飛び越えていろんな授業を受けられるのもいいと思います。視野を広く、自分の関心をどんどん広げていくことができて、いろんな人にも出会えるし、創作の勉強もできる。バランスがいいと思います。

―最後に未来ある若者へメッセージ

谷久保 自分が小説を書く意義とか、イラストや漫画を書く人もたくさんいる中で自分がなぜそれをやりたいのかをこの4年間で見つけてほしいと思います。

吉川 自分の好きなものを言語化できるようになってほしいです。言語化能力大事です!

谷久保さん、吉川さん ありがとうございました。次のステージでのご活躍をお祈りしております。